標準偏差の計算方法(ステップごとの解説)
標準偏差は、平均を求め、各値の平均からの偏差を二乗し、その二乗値の平均を取り、最後に平方根を計算すれば求まります。式は一つですが、割る数に n を使うか n から1を引いた数を使うかで、母標準偏差と標本標準偏差の二種類に分かれます。
平均だけでは分からないこと
次の二つのクラスのテストの点数を見てください。どちらも平均は70点です。
- クラスA:68, 70, 72, 70, 70
- クラスB:50, 90, 60, 80, 70
平均だけを見れば、この二つのクラスはまったく同じ成績に見えます。しかし点数の散らばり方はまるで違います。クラスAは全員が70点前後に集まっているのに対し、クラスBは50点から90点まで大きくばらついています。
| 指標 | クラスA | クラスB |
|---|---|---|
| 平均 | 70 | 70 |
| 母標準偏差 | 約1.26 | 約14.14 |
| 標本標準偏差 | 約1.41 | 約15.81 |
母標準偏差にせよ標本標準偏差にせよ、クラスBの値はクラスAの10倍以上です。平均という一つの数字では見えなかった「ばらつきの大きさ」を、標準偏差は数値として引き出してくれます。テストの平均点だけを比べて安心していると、実際の生徒一人ひとりの理解度の差を見落とすことになりかねません。
母標準偏差と標本標準偏差、どちらを使うか
手元のデータが、知りたい対象の集団そのものをすべて含んでいるなら母標準偏差を使います。例えばクラス全員の点数を集計しているなら、そのクラス自体が関心の対象なので母標準偏差です。
一方、手元のデータがもっと大きな集団から抜き出した一部にすぎない場合は標本標準偏差を使います。全国の生徒のうち一部の学校だけを調査したような場合です。この場合はn ではなくn-1で割ります。これはベッセルの補正と呼ばれ、標本という限られたデータから母集団のばらつきを推定する際に生じる偏りを補正するための調整です。データの個数が少ないほど、二つの値の差は大きくなります。
計算例:工場の品質管理データ
シリアルを500gの目標値でパッケージしている工場があるとします。10箱を無作為に抜き取り、実際の重さを計量しました(単位はグラム)。
| 箱 | 重さ(g) | 平均との差 | 差の二乗 |
|---|---|---|---|
| 1 | 498 | -1.9 | 3.61 |
| 2 | 502 | 2.1 | 4.41 |
| 3 | 501 | 1.1 | 1.21 |
| 4 | 497 | -2.9 | 8.41 |
| 5 | 503 | 3.1 | 9.61 |
| 6 | 500 | 0.1 | 0.01 |
| 7 | 499 | -0.9 | 0.81 |
| 8 | 502 | 2.1 | 4.41 |
| 9 | 496 | -3.9 | 15.21 |
| 10 | 501 | 1.1 | 1.21 |
10箱の合計は4999g、平均は499.9gです。最も軽い箱は496g、最も重い箱は503gで、範囲は7gになります。
表の右端の列を足し合わせると、差の二乗の合計は48.9になります。これを10で割ると母分散は4.89、平方根を取ると母標準偏差は約2.21gです。この10箱を、もっと大きな生産ラインから抜き取った標本として扱うなら、48.9を9で割った標本分散は約5.43、標本標準偏差は約2.33gになります。
この工場の場合、平均自体は目標の500gにかなり近いものの、標準偏差が2g前後あるということは、1箱ごとの重さには無視できないばらつきがあるということです。平均だけを検品の合格基準にしていると、この程度の変動が続いていても気づかずに見過ごしてしまいます。
自分の数値で計算する
自分の持っているデータを貼り付けて、平均、母標準偏差、標本標準偏差をその場で確認できます。
値はカンマ、スペース、改行で区切ってください。
結果を表示するには数値を1つ以上入力してください。
- 個数 (n)
- —
- 合計
- —
- 平均
- —
- 最小値
- —
- 最大値
- —
- 範囲
- —
よくある間違い
標本と母集団の公式を取り違えることです。データが大きな集団からの抜き取りなのか、それとも関心のある集団そのものなのかを先に決めておかないと、n で割るべきかn-1で割るべきかが分からなくなります。
偏差を二乗せずにそのまま平均してしまうことも起こりがちです。各値の平均からの差をそのまま足し合わせると、正の差と負の差が打ち消し合って合計は必ずゼロになります。これでは何も測れないため、二乗してから平均を取る必要があります。
平方根を取り忘れて分散をそのまま標準偏差として報告してしまうミスもよく見かけます。分散は元のデータの単位の二乗(例えばグラムの二乗)になっているため、元の単位に戻すには必ず平方根の計算が必要です。
大きな集団から抜き出した標本データに対してnを使い、標本の標準偏差を実際より小さく見積もってしまうケースもあります。データの出どころを確認し、標本ならn-1、母集団ならnという原則を毎回意識することが大切です。
よくある質問
標本標準偏差と母標準偏差はどう違いますか? どちらも計算の考え方は同じですが、割る数が異なります。手元のデータが関心のある集団のすべてを含むなら母標準偏差(nで割る)、より大きな集団から抜き出した一部なら標本標準偏差(n-1で割る)を使います。同じデータでも、標本標準偏差の方がやや大きな値になります。
標準偏差が「低い」「高い」とは、実務上どういう意味ですか? 低い標準偏差は、データの値が平均の近くに集まっていて、ばらつきが小さいことを示します。高い標準偏差は、値が平均から大きく離れて広がっていることを示します。何を「低い」「高い」とするかは分野によって違うため、同じ単位・同じ種類のデータ同士を比較して初めて意味を持ちます。
標準偏差が負の値になることはありますか? ありません。標準偏差は差を二乗してから平方根を取るため、計算結果は常にゼロ以上になります。0になるのは、全てのデータがまったく同じ値のときだけです。
標準偏差と分散の関係を教えてください。 分散は差の二乗の平均そのもので、標準偏差はその分散の平方根です。分散は元のデータの単位の二乗になるため直感的に扱いにくいのに対し、標準偏差は平方根を取ることで元のデータと同じ単位に戻り、実際の値の散らばりとして解釈しやすくなります。